研究者の卵の卵

決して頭がいいとは言えない大学生が、日々おもったことや学んだことをつらつら書きます。人工知能や脳科学の話が多くなりそうです。

【高専】千葉大学3年次編入体験記

はじめに

自己紹介の記事でも少し触れたのですが、来年の4月からは千葉大学工学部の学生です。
高専生なので、千葉大学に入るためには当然編入という制度を利用しました。
私自身、周りに千葉大学編入した先輩などもおらず、どのように対策するべきなのかが全然わからなかったので、
今回は来年度以降 千葉大学への編入を考えている高専生・短大生等のために体験記を書いていきます。

千葉大学工学部の編入制度

今年度行われた編入学志願者選抜から、千葉大学工学部はいろいろと制度を変更しています。
昨年までは推薦選抜学力選抜を行っていたようですが、今年からは学力選抜がなくなっていました。
代わりに、推薦選抜は学校推薦自己推薦に細分され、いずれも自己アピール文の提出および面接・口頭試問による選抜となりました。

千葉大学工学部の学生募集要項を引用すると、それぞれ
【学校推薦枠】

最終学年前年次の成績(卒業者は最終学年次)が上位10%以内で出身学校長が責任を持って推薦できる者(外国の大学等は、対象となりません)

【自己推薦枠】

志望するコースの2年次までに学ぶ専門教育科目の学力に優れ、自分自身をアピールすることができる者(外国の大学等は、対象となりません。)

に出願資格があるようです。
ついでに言うと、学校推薦枠は高専理工系短大の学生のみが、自己推薦枠はそれに加えて学士号取得者・取得予定者(つまり現在学部4年)と修業年限4年以上の理工系大学に2年以上在学した学生、さらに大学入学資格を持つ放送大学全科目履修生が出願できます。

対策勉強

高専の教員はだいたい、進学希望者に対しては「遅くても4年の夏休みには受験勉強を始めておきなさい」とおっしゃいます。
実際、志望先によっては4年の夏でも遅いぐらいですが、私は4年の夏休みはほとんど勉強しませんでした。
するべきだとはわかっていたのですが、インターンに3週間、研究に2週間、集中講義に1週間費やしたので、残りの2週間はほとんどやる気が出ていませんでした。
当然、夏休み明けは授業と実験と研究で忙しい、などと適当な言い訳を作って、結局まともに編入対策の勉強を始めたのは5年に上がる前の春休みでした。

やったことといえば、下級生の時に習った数学・物理の復習ですね。
特に線形代数は、授業で扱わなかった範囲もあったりしたので、そこを中心にネットと教科書をうまく使って勉強しました。
物理は要領がわかっていればある程度できるのですが、口頭試問であることを鑑みれば「〇〇の公式言って」みたいな出題もありうるかもしれないと思ったので、
暗記が苦手な私はここへきて初めて、教科書の公式にマークをつける作業を始めました。

あとは、物理や数学を担当している教員に直接、「あなたならどういう出題をしますか?」という風な聞き方で例題をいただいてひたすらそれについて考えていました。

自己アピール文

A4の専用様式が願書と一緒に送付されるので、その800字詰め原稿用紙に書きたいことを書きまくればいいでしょう。 用紙には「本学の志望理由も併せて、自己アピールを書いてください」みたいなことを書いていたのですが、募集要項の方には「本学の研究と関連していま行っている研究や活動・TOEICなどの英語の外部試験の成績・編入後の研究計画」について書くように指定されていました。
今考えればそんなことないのでしょうけど、書き始めのときは、用紙で指定されている記述内容と募集要項で指定されている記述内容が違っているような気がしたので、
募集要項の指定内容は無視して、ひたすら自分のアピールできることを書きました。

特に、学会での発表経験があることと、高専英語プレコンで割と好成績を残しているということの2点はかなり強みだと思っているので、
その辺を強調するような書き方をしました。
あとは、当然のことですが予めどんな研究室があるのかをリサーチしておいて、「この研究室に入ってこんな研究がしてみたい」という旨を書くのがいいと思います。
研究者志望であることを前面に押し出して書きました。

前日

前日にJetStarで最寄りの空港から成田空港まで移動したのち、千葉駅付近のホテルに荷物を置いて大学の下見に向かいました。
建物とかどんな感じなのか、正直全然下調べしていなかったので、いざ行ってみると感動しましたね。
同じ国立でも高専と大学でこんなにも清潔感に差が出るものなのか、と・・・。

集合場所がどこにあるのかということと、付近に腹を満たせる場所はあるのかということを確認して大学を去りました。
それからはまたホテルに戻って、近くのファミレスで食事をとってから部屋で数学と物理の追い込みをやっていました。
特に、数学に関しては、高校数学の美しい物語さんというサイトの記事を、
聞かれそうなトピックに関連したものばかりをひたすら探し回って印刷したものを持っていきましたので、
夜は枕の周りにそれを散らかして読み込みながら眠りにつきました。

当日

意外なことに、朝からまったく緊張していませんでした。
ただ、やっぱり西千葉駅のコインロッカーのあたりにスーツを着た同い年ぐらいの人たちがたくさんいるのを見たときは、さすがにドキドキしましたけどね。
持ち物は財布・携帯・電磁気と数学の教科書・学会で出した論文・TOEIC IPのスコアシート(630点)でした。

前日に集合場所を確認しておいたので、すぐに待合室に入れました。
しばらくすると先生が2名入ってきて、面接の流れについての説明を始めました。
面接室は3部屋あり、受験生全体を3グループに分けてそれぞれが割り当てられた面接室にて面接を行うというものでした。
誰がどの面接室に割り当てられるかを示すために黒板に受験番号を書いていたのですが、確か学校推薦が11人、自己推薦が10人でした。

面接室は、黒板を背にして3人の面接官の先生に向かって座るような形でした。
確か、自分の目の前にも面接官の目の前にもデスクがありましたね。
論文とスコアシートをクリアファイルに入れており、そのファイルだけ面接室に持ち込めたのですが、
このときに、このクリアファイルが筑波大学に進学した先輩から頂いたものであるということを思い出しました。
表面に大きく筑波大学の桐紋章が入っているのを見て心拍数が上がりましたね。裏返しで置きました。

面接で聞かれた内容は以下の通りでした。

  • 志望理由
  • 卒業研究の内容
  • 研究者になりたいとのことですが、進路はどうする?
  • 英語の成績は?
  • 得意だった科目・不得意だった科目
  • 席次はいくつ?
  • 勉強以外に頑張っていることは?
  • なぜ学校推薦で志願しなかったのか

また、口頭試問は

  • 畳み込みニューラルネットワークで用いられている、畳み込み処理について説明せよ
  • ニューラルネットワークの末尾では一般的にどのような処理が行われるか説明せよ
  • 画像のデジタル化について説明せよ
  • ベクトル(1, 2)とベクトル(3, 4)は線形独立か

という内容でした。

面接

ごく一般的な質問内容だと思いました。
進路については、スイスに面白そうな研究をしている大学があるので、
博士課程ではそこに進学したいということを話しました。
英語の成績を聞かれたときにTOEIC IPのスコアに言及したところ、留学するのに十分だと思うのか?と聞かれたので、
TOEIC対策の勉強をしたことがなく、完全にぶっつけ本番なので点数はもう少し勉強して上げたい、ということを答えました。

席次は4位だったのですが、研究会論文の締め切りと4年の学年末テストがかぶってしまったせいで、
最後の最後で思うような成果が出なかった、みたいな言い訳をしました。

勉強以外に頑張っていることについては、AI開発をしている企業のパートタイムエンジニア(バイトを凄そうに言っただけ)をしていることを話しました。
これは少し食いついてくれましたね、楽しかったです。

学校推薦に応募しなかった理由については、「自己推薦は自分をアピールできる人が出して、学校推薦は自分をアピールできない人が出すのかと思った」というトンデモな受け答えをしました。
学校推薦で出願した人たち、ゴメンナサイ・・・。

あとは、単位の互換について、認定できない単位がたくさんあった場合、3年次編入でも2年で卒業できない場合があるけどかまわないか、
という質問をされました。
まぁこれは保険でしょう、かなり認定してくれるという噂を聞いています。

口頭試問

数学・物理・電磁気が中心で質問されると思っていたので、かなり驚きました。
機械学習を独学していて、卒研でもバイトでもディープラーニングを扱っているということを話していたのが、
上記のような出題だった理由だと思います。
畳み込みの説明には黒板を使いました。
ニューラルネットワークの出力部分の処理について聞かれたので、典型的なものではソフトマックス関数を通したあと、
損失関数に出力と教師データを入力して損失を確かめる、という解答をしました。
損失関数ってどんなものがあるかな?と聞かれたので、分類問題なら交差エントロピー誤差関数、回帰問題なら平均2乗誤差関数とかですかね、と答えたところ、
交差エントロピー誤差関数の式は書けるかと質問されましたが、それはさすがに覚えてませんでしたw

唯一聞かれた数学の問題が「線形独立ですか」だったので、拍子抜けしてなぜか解答にてこずってしまいましたw

さいごに

結果は合格でした。
情報工学コースでは、学校推薦が9人合格していたのに対し、自己推薦枠は合格者が私だけだったので、
学校から推薦をもらえる要件を満たしている人はそちらで出願した方が絶対に確実です。

私の場合は、やはり研究やバイトなど、アピールできることがたくさんあったのが勝因かと思います。
逆に、いまから千葉大学を目指す人たちは、そういう武器をたくさん備え始めておくことをおすすめします。
特に高専の場合は、研究室選びに失敗しなければかなり質の高い研究をやらせてくれるラボがたくさんあると思うので、
そういうところで積極的に教員に頼み込んで、いろんな知識をつけておくといいでしょう!

では!

Computational Neuroscienceの受講

Computational Neuroscienceとは

脳科学に関する研究分野の一つで、日本語ではしばしば「計算論的神経科学」と訳されているようです。
Wikipediaでは、

計算論的神経科学(けいさんろんてきしんけいかがく、英語:computational neuroscience)は、脳を情報処理機械に見立ててその機能を調べるという脳研究の一分野である。

という説明がなされています。
あと、英語版の記事では

Computational neuroscience (also known as theoretical neuroscience or mathematical neuroscience) is a branch of neuroscience which employs mathematical models, theoretical analysis and abstractions of the brain to understand the principles that govern the development, structure, physiology and cognitive abilities of the nervous system.

だそうです。

もう少し具体的にいくと、Computational Neuroscienceは、計算論的な議論を用いて、脳がいかにして行動や認知を生み出しているのかを説明することを目標としています。
あえて少し抽象的な説明を持ち出すとすれば、Computational Neuroscienceは我々に、神経システムが

  • 何を しているのかの特徴づけ
  • どのように 働くのかの特定
  • なぜ そう機能するのかの理解

を達成するためのツールと方法を提供してくれるというわけです。

エラそうに説明してみましたが、私も実はComputational Neuroscienceを勉強し始めたばかりで、 上記の説明も受講し始めたばかりのCourseraのコースで先生が仰っていたことの受け売りです。
今回はComputational Neuroscienceは面白いねっていう話と、Courseraの宣伝をしようかと思います。

Courseraについて

こんな記事読んでる時点でほとんどの人がCourseraがナニモノなのかは知っていると思いますが、一応触れておきます。
Courseraはスタンフォード大学Andrew Ng大先生たちが創設した、MOOCプロバイダです。
MOOCってのは、「授業」をオンラインで受講できるサービスのことですね。
Courseraは世界中の有名大学が協賛していて、発祥の地であるスタンフォード大学とか、さらに東へ回るとスコットランドエディンバラ大学の授業なんかも受けたことがあります。
ちなみに創設者のAndrew Ngさんは、機械学習とかディープラーニングを勉強している人にはなじみ深い名前ですよね。

読み物とかレクチャー動画にアクセスするだけなら、無料でもある程度学べる(聴講)のですが、課題にチャレンジしたり修了証を発行してもらうためにはコースごとに学費を払う必要があります。
たとえば、今回受講を開始したComputational Neuroscienceだと50ドルぐらいでしたかね、そんな感じです。

ただ、Courseraさんは私みたいな下流階級出身のしがない貧乏学生のために学資免除という素晴らしい制度を用意してくださっています。
申し込み方は簡単で、学資免除申請のページで指定されたフォームに「なぜ学資免除が必要なのか」「このコースを受講すれば自分のキャリアにどのような効果をもたらすのか」を記入して送信するだけです。
言語には指定がなかったのですが、まぁ日本のサービスではないので一応英語で書いて出しました。
承認を通知するメールが案外あっさりしていて、少し寂しかったですねw

そんなこんなで全額免除を受け、
昨日からワシントン大学が開講しているComputational Neuroscienceに関するコースで勉強を始めたわけです。

講義を受けてみて

とりあえず、「Course Introduction」というセクションのレクチャーを一通り見終わりました。
意識が高いのでちゃんとノートも取りながら見ましたよ。

神経システムの計算論的モデルには「Descriptive Models」「Mechanistic Models」「Interpretive Models」の三つがあって、それぞれ上で紹介した 何をしているのか、 どのように働くのか、 なぜそう機能するのか を知ることに、それぞれ重きを置いているようです。

猫の視覚機能の実験

具体的な例として、Hubel先生とWissel先生の、猫の脳の視覚機能に関する実験について取り上げていました。
猫の後頭部に電極を差し込んで、あるひとつの(?)神経細胞の反応を観測できるようにした状態で、その猫にある映像を見せます。
それが、ディスプレイ上に表れる棒状や面状の光です。
そして、観測されていた一つの神経細胞は、その光の棒が右肩上がり45度になっているときだけ、スパースなスパイクを発生したのです。

受容野という概念の導入

この実験に関する議論をさらに展開し、受容野(Receptive field)という概念を導入しました。
特定の神経細胞に強い反応を生み出す外的刺激の特性という定義で話していました。
そして、この受容野という性質に対し、Descriptive/Mechanistic/Intepretive Modelの例を論じていました。
視覚機能は、網膜・外側膝状体(LGN)・一次視覚野(V1)を信号がフローしていくことで実現していて、
網膜やLGNの神経細胞は、網膜のある部分に点で光を受け取っているかどうかを認知していて、これを単純モデルにしたものをDescriptive Modelのひとつとして論じています。
また、それがV1では、いくつかの点を認識する神経細胞からの情報が統合されて、ある角度で傾く光の棒にだけ反応する猫の神経細胞のような機能が発現している、と説明していました。
その統合の過程がMechanistic Modelの一例ですね。
で、最後には、V1の受容野がなぜそのような形をしているのか、という問いを軸に、
その形がいろんな映像を正しく認知するのに一番合理的だから、という説明をInterpretive Modelの一例として議論しました。

ディープラーニングの考えと比較

要は、脳では、網膜→LGN→V1と信号が流れるにつれて、点→線という風に受容する信号の特性が変わるわけです。
ここで畳み込みニューラルネットワークアルゴリズムを考えてみると、
深い層に信号が流れていくにつれて、信号は 画像→特徴量→クラス分類 とフローしていきます。
システムに対して入力があった時点で、それを統合されたひとつの「画像」として扱う畳み込みニューラルネットワークに対し、
神経科学における視覚機能は、入力をあくまでばらばらの点信号としてとらえ、それが脳内をフローしていくにしたがって統合され、ひとつの画像として認知されるという流れがあるようです。
もともとニューラルネットワークは読んで字のごとく、脳のニューロンの単純モデルからなる機械学習アルゴリズムですが、
意外とアプローチは似て非なるものなんですね・・・。

さいごに

いろいろ書きましたが、まだあと7週間ほどプログラムが残っているので、コツコツ勉強していきたいと思います。
なんか、あんまり授業の内容を詳しく書いていると怒られそうなので、文献を探せば出てきそうな議論を中心に軽くレビューしてみました。
これからは黙って勉強していって、最後の最後で重要なことを備忘録としてまとめるつもりです。
何か面白い話題があればまた書きますね!

自己紹介

こんにちは。 なんだかノリでブログを始めたくなってしまったので開設しました。 あんまりしょっちゅうは書きません。 とりあえず自己紹介する記事を書きますね。

所属

怖いので詳しくは書きませんが、四国の高専の情報系学科に所属しています。5年です。 プログラミングを学び始めたのは小6ぐらいですかね、かなりハマったので、中学を卒業したときに地元から離れて越県進学しました。 プロコンも一時期やってましたが、今思い出せばあんまりメイン部分を作らせてもらった記憶がありませんね。 基本的にはサーバー実装とかバックエンドばっかやってましたが、正直まったくその辺には興味ありません。 うちは4年で研究室に配属になるんですが、それからはプロコンはやめました。

研究

高専入学したての頃から、AIに興味持って本とか買って勉強してきました。 なので、せっかく高専に来たはいいもののあんまり高専で習うことには興味出ませんでした。 その代わり、卒研が2年間もできるので最高です。 今は、自然言語処理系の研究室で、テキストの感情推定とデータの水増しに関する研究をしています。 ざっくりそういう感じのキーワードで論文検索したら僕が第一著者になってる論文が出てくるかもしれません。気づかないふりをしてください。 19歳で論文発表はすごいよ、と研究室の先生に褒められましたが、たぶん明石・奈良・木更津・東京あたりのトップ高専だとそういうことしてる人はゾロゾロいるんでしょうね。 もちろん卒業後は研究者志望なのでドクターまで行きますよ。

バイト

インターンでお世話になった会社に雇われて在宅バイトしてます。 出社しないタイプのやつなのになぜか時給制で、かなり給料はいいです。満足してます。 AI開発をやってる会社で、ディープーラニングのモデルのテスト実装とかプロトタイピングみたいなことをやってます。 大学行っても続けるつもりなのですが、最近手際が悪くて無能認定されそうで怖いですね。頑張ります。

進路

先日進学先が決定しました。千葉大学の工学部です。 高専にいる間は特定怖いですが、敵を作るようなことを書くつもりはないので、大学名ぐらいは言っておいても問題ないですよね。 落ちた時のために筑波大学の知識情報・図書館学類にも出願していたのですが、辞退します。 千葉大学はなにげに志望者多そうなので、編入体験記みたいなのはそのうち書きます。

こんな感じです。 ゆるく書きましたが、次回からはもっと元気な文をかけたらいいですね。 よろしくお願いします。